1.背景
野生動物の生活圏と隣接する「車の町 豊田市」の山里では猪や鹿による農林産物被害により、営農意欲が消失し耕作放棄地が増え野原化や薮化が年々進んでいます。それは景観の悪化だけでなく野生獣の新たな生活圏となり、人と獣の距離が近づき被害が増えるという悪循環となり問題になっています。
その対策として駆除捕獲がされていますが、平成29年度は3800頭の捕獲実績がある内約19%の700頭余りが食肉として利用されています。しかし残り3100頭は山などに埋却廃棄されています。食肉利用された個体でも、皮や骨など残った部分は産業廃棄物としてコストをかけて処分しています。
確かに、農林業関係者にとって収入源を絶たれたり、里山/森林の荒廃に繋がる被害には駆除等何らかの対応が必要でしょう。ならば駆除した以上は、お肉以外の皮・角・骨 も、里山ならではの自然資源として何らかの利活用が出来るのではないかと考える方も少なからずおみえになるのではないでしょうか。そこで、誰も取り組んでいないだろう猪・鹿の皮・角・骨の活用を探る為しし森社中を立ち上げました。
02.自然と共にある暮らしを意識する
古くから日本人は、生きるため、暮らしを維持するために自然の恵みを利用して生きてきました。食べ物、衣類、住まい、燃料、灯り、飲み水、生活道具などあらゆる物を自然の中に探し求め、知恵と工夫を積み重ねて活用方法を見つけ出し質を高めてきました。
確かに現代とは違い科学も技術も発達していない時代なので、
身の回りにあるものからあらゆる物を調達するのが当たり前ではあったのですが、野生獣も貴重なその素材であり、食用としてだけではなく骨や皮なども加工し、知恵と経験を積み重ね余すところなく使い共存共生をしてきました。
03.思い
しし森社中はそこに着目し思いました。『御山からの授かり物である猪や鹿は自然の摂理に従い、命をまっとうし種を残す為だけに生きており自然の一部である、人間はずっと昔から共存共生してきて、皮も骨も角も世界中で利用されてきた歴史や文化がある、彼らをジビエとして食し忘れ去ってしまうのでなく、使える物、役立つ物に形を変えて生活の中に取り込み、日常的に見たり触れたりする事で、自然の恵みや森の命を尊びエシカルな思考に繋がることが出来るのではないか』 と。
100%天然の本物には、角にしろ皮にしろ、過酷な自然の中で生き抜いてきた存在感と凄み・優しさを感じます、つまり野性の証『森の形見』とも言えるでしょう。命を大切に…と口では言いますが、命を奪うのも捨てるのも人間の都合です。食べて美味しかったで終わらずに、そのあとも「森の形見」に触れる度に、美味しさと空腹を満たす糧を与えてくれた彼ら一頭一頭を思い感謝することが大切です。他人や工場が生産して梱包された製品を大量消費する生活に慣らされて忘れてしまったこと、それは私達の命は自然の中にあった命に支えられているという事です。天と地と水から全てを与えられているからこそ生きていられるという大きな事への気付きに繋がるきっかけになればと、しし森社中は猪・鹿の利活用という小さなことに取り組みます。
04.目指すこと
猪や鹿を山里ならではの自然資源と捉え、食肉活用は解体施設に任せ、皮・骨・角を活用した事業による地元地域に密着したジビエ関連スモールビジネスの構築を目指します。